vol.5 トースティング、チャーリング
樽材のトースティングとチャ−リング:
どちらも樽の内面を加熱処理することで、おもに前者はワイン樽、後者はウィスキーなどのスピリッツ樽に施される。トースティングはゆっくりとした過熱で、チャーリングは炭化させる急激かつ強度の熱処理である。
樽内面の加熱処理は製樽上最も重要な要素である。加熱当初、木の熱せられた香りが立ち上り、その後ヘミセルロースが分解されウッドシュガー(多糖類)が生まれ甘い香りに変わり、カラメル化がはじまる。
次にオークリグニンの分解によるバニリンからバニラの強い香りが起こる。


アメリカンオークでは 300°F(167℃)タンニンの分解が始まる。 350°F(198℃)でヘミセルロースの分解が始まり、やがてカラメル化する。Hmf(Hydromethyl Furfural)の生成によりトースティーフレーバー(芳ばしい焼きたてのパンの香り)が生まれる。 400°F(230℃)でリグニンが分解し始め、バニリンが生成される。
以上はアメリカンオークで年輪の幅が1.5〜2.0mm(詰まった木目)での目安。


フレンチオークでは熱変化はもっと低い温度から始まる。酢酸が生成される可能性もあり、フェノール臭が生じる⇒不快成分タンニン:アメリカンオーク、フレンチオークともタンニンは平均した割合で加熱分解される。 Hmf(薫香またはトースティーな香味) アメリカンオークはフレンチオークに比べ熱の浸透性が高い。Hmfはアメリカオークで深くまで加熱生成される。従ってアメリカンオークがよりトースティーといわれる。


バニリン:バニリンの総量はフレンチオークがより大きいが表面に集中。中間層では差はなくなる。


ヘミセルロース:230℃まで分解され、その後大きく減少する。


リグニン:単体でなく複合体で存在する。分解される温度、スピードはまちまちである。


オークラクトン(MOL):cis型がより芳香性が高い。樽材では加熱された表面、裏面より中層部で最大。アメリカンオークでよりラクトンが多い。


リグニン:適度の加熱はフェノーリックアルデヒド、バニリンなどを生成し、フェノールを生む(スモーキー、タール様、薬品臭など)。それ以上の高温ではフェノールのみが産物となり、それより少し低い温度ではグアイヤコール、エチルフェノール、クレソールが生ずる。


加熱変化が起こり易いのはタンニン、hmf、バニリンの順である。

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